戦略顧客のクレームや要望のみを選択的に取り上げるということを明確に実践したのがコンチネンタル航空の劇的な企業再生劇をリードした、当時のCEOのゴードン・ペスーンです。同社は、一九九四年当時、二度の会社更生法適用申請をするまでに業績が悪化していただけでなく、乗客からの苦情数が業界平均の三倍にも上る「悪評高い」航空会社に落ちぶれていました。そんなときにゴードンは、顧客との関係の修復を機軸に経営資源の再配分を行うという方針で企業再生に臨みました。そして顧客ニーズをつかむにあたっては、同社の戦略顧客と考えられる「9C顧客」にターゲットを絞りました。「9C顧客」とは、正規料金で頻繁に利用するビジネスクラス顧客のことを指していました。つまり、コンチネンタル航空にとっての戦略顧客はフリークェントーフライヤーのビジネスクラス客という認識に立ち、彼らのニーズに最優先で対応していこうとしたのです。しかも、ゴードンはこれらビジネスクラス客に対して、「どの点を改善してほしいか」といった通常聞かれるような質問を投げかけたりはしませんでした。彼は、「追加的にお金を支払ったとしても受けたいサービスは何か」という聞き方をすることによって、顧客にとっての切実なニーズだけを拾うことに成功しました。こうして収集した戦略顧客のニーズへの対応に的を絞った戦略を実行することによってコンチネンタル航空は二年後には「J・D・パワーズ賞」(アメリカでの顧客満足度ナンバーワンーエアラインに贈られる賞)や「エアラインーオブーザーイヤー」を受賞するほどまでに復興し、しかも業績においての黒字転換という見事な再生も果たしました。